3月18日(土)
   
朝、体温はまた上がった。
    あぁ良かったと思いながらトイレへ行った。
    するといきなりかなりの出血。

    「血、出ちゃった…」
    「そっかぁ〜 じゃあ仕方ないね」

    わたしは「虹さ、ベビちゃんがバイバイ言いに来たんだね。
    見れてよかったね」とダンナに言った。
    2人で泣いた。
 

   
昨日のせいでまぶたがすっごく腫れているのにまたまた泣いてすごい顔。

   
わたしがこれまでの10日間のことを思い出して
     義父様のお誕生日にいい報告できなかったね
     年賀状も2人のままだね
     ビデオカメラもいらなくなったね
     初たまももう読まないね
     こんなに悲しいこととは知らなかったね
     1日1日すごく長く感じたけど、やっぱりあっと言う間だったね
    とまた泣いていると、ダンナに「もう泣かないって決めたじゃん!」と。
    「そういう○○(=ダンナ)だって泣いてんじゃん!泣きたいときは
    一緒に泣こうよ」と言うと「俺だって悲しいよ。でももう泣かないって決めたの。
    それにいい報告だってビデオだって延期しただけだもん」と
    一生懸命ガマンしようとしているようだった。

    わたしは自分を責めた。
    たしかに今まで比較的順風満帆な人生を送れてきたと思う。
    でも、体のことではとかくつまづきがちだ。
    「どうしていつもつまづいちゃうの??」
    ダンナは「でもいつもちゃんと乗り越えてこれたじゃない。
    大丈夫だよ、これもいつか絶対乗り越えられるって」と励ましてくれた。
    

    母にもメールでダメだったことを伝えた。
    「残念だったね。○○さん(=ダンナ)もガッカリしてるんでしょうね。
    今後のことは病院でよく相談してね。妊娠できるとわかっただけでも
    前進したと思って次回につなげてね!父があまり気を落とさないようにと
    言っています。体調に気を付けてね★」という返事をもらった。
    確かに本当に前進できてよかったと思う。
    そして、いつも控えめに応援・心配してくれる父の姿が目に浮かんでうれしかった。
    ありがとう、お父さん・お母さん。


    それから少ししてトイレへ行くと今まで見たこともないような
    大きな大きな血のかたまりが出てきた。すごくビックリした。
    この中のどこかにベビちゃんがいるのかな?
    おもわずダンナを大声で呼んだ。

    「大きなかたまり出てきた。」
    「見せて」
    「怖いよ。それでも見れる?」
    「うん」
    「ほら」
    「わ…すごい」

    わたしはこれをどうしてもトイレに流したり、ゴミ箱に捨てたりできないと思った。
    できるならわたし達が将来入るお墓に埋めてあげたい。
    でも義父様がお墓をこれから建てようとしているため、残念ながらまだない。
    「どこかに埋めてあげよう。すぐ会いに行けるとこに」
    

    海にしようかと話し合ったけど、わたしは海じゃなくて木々がたくさんあるところに
    したいと思った。去年桜を見に行った公園に決めた。

    車で少し行ったところにその公園はある。
    丘の上にある公園は見晴らしはすごくいいけど、登るのが結構キツイ。
    でもこの子のためならと頑張って歩いた。

    桜の木がたくさんある。
    ここにしようか。
    シャベルを忘れたので落ちた枝で掘ろうとしたけど、全然ダメ。
    カメラも忘れた。
    …戻ろう。

    再度出発。また丘を頑張って登る。
    「よーし、今度こそ」
    わたし達はもう泣いてなかった。
    シャベルで少し深めに掘ってあげた。

    ティッシュにくるんだ大きな血のかたまりを入れた。
    土をかけた。
    やっぱり涙が出てきた。
    いかにも「掘りました」という跡があると誰かに掘り起こされるからと上から砂をかけてあげた。

    「いろんな気持ちをくれてありがとう。また頑張るからね!!」
    「ねぇ、わたし達の子どもになって幸せだった?」
    いろんな思いを伝えながら手を合わせた。
    桜の木と一緒に写真を撮り合った。2人とも目が赤い。

    「大きくなってね!!」
    手を大きくたくさん振って「バイバイ!!」と言った。

    「ねぇ、来年の今日また来ようね」
    「もちろん!」
    「転勤があってもずっと来てあげようね」
    「もちろん!!」

     ベビちゃんの眠る桜の木



   実は今日はわたし達の入籍2周年記念日だった。
    「記念日が命日かぁ…」

    わたしはここ何日間か1人でいるとすぐ悲観的になってどうしようもない
    状態だったけど、ダンナがいてくれるときは比較的落ち着いていられた。
    やっぱりこの人の存在は大きいんだとあらためて気づかされた。

    わたしはダンナの寝顔を見るのが好きでいつもすぐ寝てしまうダンナの寝顔を
    見ては「この人の子どもが欲しいナ」と思っていた。
    それにダンナはわたしより多少年上なので早く生まなくてはという気持ちもあった。
    でも今回は残念な結果になった。
    ダンナに「また2人に戻っちゃったけど、不幸じゃない?」と聞くと
    「不幸なわけないじゃん。世界で1番好きな人と結婚できて本当に幸せだよ」と
    言ってくれた。


   
わたしはここのところ、子どものいないわたし達は不幸だと勘違いしていたかもしれない。
    今日、2人でいられる幸せをよーくよーく思い知った。

    そして、わたしは「子どものできない体なんだろう」と憂いて前になかなか進めずにいたけど、
    今回妊娠できる体と知ることができた。
    これは大きなことだったと思う。

    今まで心に余裕がないときは、劣等感で妊婦さんや小さい子連れの幸せそうな家族を見ると
    辛くなることもあったけど、妊娠がわかってからは自然と妊婦さんや小さい子連れの家族を
    見かけても尊敬し、優しく接することができるようになっていた。
    ベビちゃんに「これからはいつもそういう優しい顔でいようよ」と言われた気がした。

    従姉妹が亡くなった時、わたしは中学生だった。
    大人のようでやっぱり子ども。よくわかっておらず、
    赤ちゃんの遺体を見て泣き崩す叔父と叔母を見て
    「悲しいのはわかるけど、まだ生まれて10日だったのにこんなに泣けるものなんだ…」と
    不思議に思ったことを思い出した。
    でもおなかにいるとわかって10日間だってこんなに悲しかった。
    想像を絶する悲しみだった。
    叔父や叔母はどれだけ辛かったことだろう。計り知れない。
    これからはもっと人の痛みをわかることができるかもしれないと思った。

    ダンナは「わざわざいろんなことを教えに来てくれたんだから、無駄にしちゃダメ。
    体は遠くに行っちゃったけど、魂はココにいて次に生まれ変わるんだから、
    赤ちゃんだって生まれてきたいんだから、これからも頑張っていこうね」と
    わたしのおなかを指さしながら言った。
    そのとおりだと思った。

    記念日にいろんなことを教えてくれたベビちゃん。
    わたし達の絆も一層深まり、今日はかけがえのない、忘れられない1日となった。


    じゃ、気を取りなおして焼肉でも食べに行きますか!
    今日は記念日だしね!
    わたし達は幸せな気持ちで焼肉をほおばった。

    夜は雨が降った。
    「ベビちゃん寒くないかな?」
    「深く掘ってあげたからあったかいはずだよ」
    「そっか♪」


   
ダンナがわたしの体を気遣い
    「体、辛くない?」と心配してくれた。
    「それがね、あんまりおなか痛くないんだよね。
    左の卵巣の痛みもかなり弱まってきてるんだよねぇ。
    …親孝行な子だったんだね」とまたちょっとしみじみしてしまった。


    ダンナにあらためてこう言われた。
    「Poohのいけないところを1つ言うよ。
    神経質なところ。細かいことを気にしてばかりいると
    ストレス溜まるし、体にも良くないと思うよ」
    そのとおりだと思う。
    治したい。治さなきゃ。


 
3月19日(日)

    やっぱり夜中や朝は、結構おなかが辛かった。
    「イテテテテ…」
    ダンナは「昨日親孝行な子って泣いてたのに?」と笑った。
    「うん、やっぱ少しは手のかかる子だったみたい」とわたしも笑った。
    いつもだったらもう薬に助けを求める痛さだけど、
    今回はちゃんと痛みを味わおうと自然に任せている。
    そして経血がトイレへ流れていってしまうたびに手を合わせて
    感謝の気持ちとこれから頑張る決意を誓っている。

    ダンナは「またすぐにでも挑戦しようね」と言うが、
    わたしは「甲状腺の数値をもう少し良くしてからの方がいいんじゃない?」と
    慎重にいきたいことを言った。
    ダンナは「失敗を恐れてたら何も始まらないよ!
    やれるだけやらなくちゃ赤ちゃんに失礼だよ」と言う。
    そうだね、明日病院に行って先生にまた頑張ってもいいって言われたら
    頑張ろうじゃありませんかっ!!
    前向きに、前向きに♪



   〜おわりに〜
    短い10日間の思い出ですが、このとき感じたこと、気づいたことを
    忘れたくないし、自分の中で風化したくなかったので、日記にしました。
    ただ、これだけのことを公表するのには勇気が要ったのも正直なところです。
    でももし同じようなことでお悩みの方がいらっしゃれば、参考にしていただければ
    いいなとの思いで載せました。
    わたし達夫婦はbaby*から与えてもらったことを無駄にしないで、これからも
    前向きに頑張っていきたいと思いますo(*^▽^*)o